ファイト!(その1)

のどかな小春日和。
昼から会社に出ようと乗り込んだ湘南新宿ラインはすいていた。
午前11時の陽射しは、ぽかぽかと暖かい。
良い日になる予感に穏やかな気持ちで、遅い時間の通勤を愉しんでいた。
「携帯やめろ!」
あーぁあ、電話すんなよ電車の中で、心の中の声である。
「携帯やめろって言ってるだろう!」
メールを打つ手を止めて見上げた私の目の前に、酔っ払いのジジイが赤い顔をして立っていた。
「カーン!」
私の身体の中で、ゴングが鳴った。